上司のヒミツと私のウソ
「それに、相手が変わるのを待ってるだけじゃだめよ。華も変わらないと」

「私が? どんなふうに?」

「それは私にもわからない。華が自分で考えなきゃ」


 開け放たれた窓から心地いい風が入ってくる。

 レースのカーテンがひらひら揺れている。

 窓の下に置かれたチェストの上で、私が昨年の誕生日に贈ったアンティーク時計が時を刻んでいる。


 さっきおばさんが運んできたオレンジジュースのグラスがテーブルの上で汗をかき、溶け始めた氷が涼しげな音をたてて揺れた。


 私は両手でリネンのクッションを抱き、気怠い溜息をこぼしてラグの上に横になった。


「なにかあったの?」

 ミサコちゃんが聞いてくる。

「ううん」

「元気ないじゃない」

「そんなこと……ないけど」


 子供のころはなにもわからなくて、父や母がいつも疲れてイライラしているのは自分のせいだとおもっていた。私が忙しい彼らの邪魔をしているせいだと。
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