上司のヒミツと私のウソ
 全身の血がすべて凍りついたようで、息をする余裕もなかった。足がぐらついて、立っていることさえままならない気がする。

「ふーん。否定しないんだ」

 フェンスから離れて、くるっとこちらを向いた。笑っている。

「あんたの猫かぶり、前からムカついてたんだよね。もうやめたら? 潮時だとおもうよ」


 私の中でなにかが弾け飛んだ。


「関係ないでしょ」


 沸き上がる怒りにたちまち全身を支配された。いいようのない憤りが、胸の奥深くまで喰い込んでいった。

「あなたに、あれこれ指図される筋合いはない」


「親切でいってるのに」

「部外者は黙ってて」

「部外者はそっちでしょ。おとなしく給料の計算でもしてれば?」


「私は本気で企画の仕事がしたいのっ!」


 怒りで頭が火のようになっていた。

 我を忘れて、フェンスにしがみつき叫んでいた。その視界の隅に、さっきまで見えなかった細長い影が映った。

 安田の向こうに、矢神課長が立っていた。
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