上司のヒミツと私のウソ
 でも、本当に知りたかったのは。

 私が本当に知りたいのは、矢神の気持ちだ。




 翌朝、私は普段より二十分以上も早く出社して、屋上で矢神を待った。

 けれど、いくら待っても矢神は現れなかった。

 執務室に下りて彼のデスクを確認してみたけれど、パソコンの電源は入っておらず、姿も見あたらない。


 始業時刻が過ぎても矢神が来ないので、私はたったいま気づいたというようなそぶりをして、安田に「矢神課長は?」と聞いた。すると、安田は呆れたような顔をした。

「関西に出張。十日の夕方に帰社するって、連休前にいってたじゃない」

 私はあっと短く呟いて、イントラネットの矢神のスケジュールを確認した。たしかに十日まで出張になっている。


 そういえば連休前、突然出張が決まったとかなんとかいっていたような気がする。

 ようやく思い出した私は、ほっとしたようながっかりしたような、複雑な気分になった。


 昨夜はほとんど眠れなかった。
< 220 / 663 >

この作品をシェア

pagetop