上司のヒミツと私のウソ



 定時になっても、佐藤部長は外出先からもどってこなかった。

 急ぎの仕事はすでに片付けてしまっていた。私は早々とタイムカードを押し、まだ明るいうちに会社を出た。


 アパートにもどり、冷蔵庫の中をチェックした。今夜は外食する予定だったから、ろくなものが入っていなかった。

 煙草をくわえてテレビをつけた。

 どこの番組もバレンタインの話題ばかりだった。バレンタインをテーマにしたドラマやトーク番組、クイズ番組ですら、バレンタインをネタにした問題を出している。


 鞄の中に、今夜わたすはずだった手作りのチョコレートが入っていた。


 チョコレートを手作りするのも、ラッピングに挑戦したのも、はじめてだった。

 淡い水色のハンカチを使ったシンプルなラッピング。中身もシンプルで、甘さを控えた小さめのチョコレートケーキだった。

 デコレーションはせずに、メッセージカードを添えた。


──これからもよろしくお願いします。


 昨日の夜、おもい悩んだすえに書いた一行のメッセージ。
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