上司のヒミツと私のウソ
「いっておきますけど、私は課長に頼まれたから西森さんと仲良くしてるわけじゃ……」

 いいかけて、安田はさらに悔しそうに顔をゆがめて黙りこむ。


「たしか、同い年でしたよね」

「違います」

「でも、たしか西森さんも二十九だったと……」

「西森さんは三十です、課長。私はまだ二十九ですけど。そこのところ、すごく大事ですよ。間違えないでください」


 安田は怒ったようにいい、デスクの上を手際よく片づけて帰り支度を始めた。

 西森はいつのまに三十になったんだろう。

 付き合っていたときは、たしか二十九だといっていたような気がするのだが。


「課長、ひょっとして」


 帰り支度をすませた安田が、試すような目でこちらをじっと見ている。


「知らなかったんですか。西森さんの誕生日が二月十四日だったこと」


 二月十四日。

 なにかがバランスを失い、大きく傾いた。
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