上司のヒミツと私のウソ
「お先に失礼します」
安田は溜息をひとつ残して帰っていった。
西森のことを相談するために、わざわざこの時間まで残っていたのだと、このときようやく気づいた。
結局「あすなろ」には立ちよらず、まっすぐ自宅のマンションに向かった。ひとりで飲みたい気分だった。
冷房の効いた電車を降りたとたん、ムッとした暑気に包まれる。
空は午後から曇ったままで、未だ雨は一粒も落ちてこない。そのせいか、夜になっても気温は下がらなかった。
駅から数分歩いただけで、背広の下のシャツがうっすら汗ばむ。
冷蔵庫で冷えているビールの味を思い出しながら、帰り道を急いだ。だが、マンションの部屋の前に膝を抱えて座りこんでいる女を見たとたん、心臓が止まりそうになった。
「彩夏……?」
そっと近づいて声をかけると、膝にうずめていた顔を上げて彩夏がぼんやりとこちらを見た。
「あ、庸介くん。おかえり」
安田は溜息をひとつ残して帰っていった。
西森のことを相談するために、わざわざこの時間まで残っていたのだと、このときようやく気づいた。
結局「あすなろ」には立ちよらず、まっすぐ自宅のマンションに向かった。ひとりで飲みたい気分だった。
冷房の効いた電車を降りたとたん、ムッとした暑気に包まれる。
空は午後から曇ったままで、未だ雨は一粒も落ちてこない。そのせいか、夜になっても気温は下がらなかった。
駅から数分歩いただけで、背広の下のシャツがうっすら汗ばむ。
冷蔵庫で冷えているビールの味を思い出しながら、帰り道を急いだ。だが、マンションの部屋の前に膝を抱えて座りこんでいる女を見たとたん、心臓が止まりそうになった。
「彩夏……?」
そっと近づいて声をかけると、膝にうずめていた顔を上げて彩夏がぼんやりとこちらを見た。
「あ、庸介くん。おかえり」