上司のヒミツと私のウソ
 メーカーの担当者、営業マン、社外のデザイナー、コピーライター、広告代理店、さまざま人たちが知恵を出し合い、ときには喧嘩もし、何度となく失敗を繰り返してプロジェクトを成功に導いていく。


 気がついたら夢中になって見ていた。


 それから数か月後に、その飲料メーカーが中途採用社員を募集しているのを知って、試しに応募してみた。

 書類選考で落とされるだろうとおもっていたら、運良く採用された。入社してしばらくしてから、番組に出ていたプロジェクトリーダーが矢神課長だと知った。


 はじめて言葉をかわしたときは、うれしかった。

 下心なんてなかった。

 ただ純粋に、番組を見て感動したこと、そのせいで私は今ここにいるのだということを伝えたかった。それだけだった。

 でも、いつかその純粋な気持ちに、別の気持ちが加わっていた。


「仲直りできてないみたいね」

 昼休みの屋上でぼんやり煙草を吸っていたら、いきなりつんけんした声。見ると、フェンスの向こうに安田真琴が立っていた。
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