上司のヒミツと私のウソ
「あー……、そうなんですか」
矢神は押し黙ったままで、広い背中は一度もこちらを振り返らない。
下降するエレベーターの速度が、異様に遅く感じられた。なぜか息苦しくて、押さえこまれたように胸が痛い。
エレベーターが一階に到着して扉が開くと、ほっとした。
矢神はまっ先にエレベーターを降り、振り返らないまま行ってしまう。
「行くよね?」
すでに消灯して暗くなっているエントランスに立ち止まり、福原さんが明るい声で誘う。さりげなく私の行く先に立って、横手にある社員専用出口に向かうのを遮る。
「でも、やっぱり、その……終電の時間とか、気になりますし」
「タクシーで帰れば? ほら、西森さんと僕、帰るの同じ方向だしさ。途中まで一緒に乗ってけばいいよ」
「でも……あの……」
「いいからいいから。行こう」
福原さんが私の腕をつかんで、出口へ向かおうとした。
そのとき、いきなり矢神が現れて福原さんを引き離すと、強引に私との間に入りこんだ。
「西森」
えっ、と声にならない叫びをあげる。
矢神は押し黙ったままで、広い背中は一度もこちらを振り返らない。
下降するエレベーターの速度が、異様に遅く感じられた。なぜか息苦しくて、押さえこまれたように胸が痛い。
エレベーターが一階に到着して扉が開くと、ほっとした。
矢神はまっ先にエレベーターを降り、振り返らないまま行ってしまう。
「行くよね?」
すでに消灯して暗くなっているエントランスに立ち止まり、福原さんが明るい声で誘う。さりげなく私の行く先に立って、横手にある社員専用出口に向かうのを遮る。
「でも、やっぱり、その……終電の時間とか、気になりますし」
「タクシーで帰れば? ほら、西森さんと僕、帰るの同じ方向だしさ。途中まで一緒に乗ってけばいいよ」
「でも……あの……」
「いいからいいから。行こう」
福原さんが私の腕をつかんで、出口へ向かおうとした。
そのとき、いきなり矢神が現れて福原さんを引き離すと、強引に私との間に入りこんだ。
「西森」
えっ、と声にならない叫びをあげる。