上司のヒミツと私のウソ
「それからな」

 資料を閉じたファイルを抱えて、矢神が唐突に席を立った。


「しばらく社内では俺に話しかけるな。用があったらメールを使え」

「……はい?」


 急にそっけない態度に変わったので、すぐにはなにをいっているのか理解できなかった。


「あの、それはどういう……」

「俺に話しかけるなといったんだ」


 ほんのわずか、語気が荒くなったことにぎくりとする。

 矢神は戸惑っている私を置き去りにして、さっさと会議室の扉に向かって歩いていく。私はあわてて矢神の背中を追う。


「すみません。意味がよくわからないんですけど」

「屋上での休憩も時間をずらした方がいい。とにかく社内ではなるべく離れてろ」

「どうしてですか? 理由がわかりません」


 さっきよりいっそう深く眉間に皺を刻んで、矢神はあらぬ方向を見つめて口を閉ざしている。
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