上司のヒミツと私のウソ
「悪かったな、心配させて」

 仏頂面なのでちっとも申しわけなさそうには見えなかったけれど、矢神の声はわずかばかり自信なさげだった。


 私にできることがあるとしたら。

 矢神の言葉にならない思いをチームのみんなに伝えることだ。そしてそれこそ、なにより必要なことなのではないかとおもえた。


 今になってわかった。

 私が見ていた夢は、企画部に入ることでも、プロジェクトメンバーの一員になることでもない。このひとと一緒に仕事をすることだ。

 あのドキュメンタリー番組を見たときから、ずっとそれを願っていたのだ。


「別に、課長のことで悩んでたわけじゃないです」

 嘘ばっかり。めいっぱい悩んでいたくせに。

 安田のいったとおりだ。私はこのひとのことで頭がいっぱいで、もうどうしようもないくらい夢中になってる。
< 408 / 663 >

この作品をシェア

pagetop