上司のヒミツと私のウソ
 西森は表情を崩さず仕事に打ちこんでいるが、横顔に不安のいろが流れている。

「いえ、かまいません」


 宣伝企画課の雰囲気が悪いことは自覚している。

 あの三人が西森のことで腹を立てている(というより拗ねている)ことも知っている。誰が見ても一目瞭然だ。


 いちど時間を作って、話し合った方がいいのだろうとはおもう。もともと気のいい連中だから、今回のプロジェクトの経緯を筋道立てて話せば、わかるはずだ。


 けれど、今は少々やっかいな感情を抱えている。

 『RED』のメンバーに西森を参加させたいと先にいったのは本間だし、俺自身の私情はからんでいないとおもうのだが、断言できなかった。


 昼休みは屋上で過ごした。

 西森が財布を手にして安田と一緒に社外へ出ていくのを確認したから、考えごとをいちばん邪魔されたくない相手に邪魔される心配はない。


 買ってきた弁当に手をつける前に一服しようと煙草をくわえ、錆びたパイプ椅子に腰掛ける。


 どうして西森なんだろう、とおもう。
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