上司のヒミツと私のウソ
 西森にどうおもわれようと──恨まれようと蔑まれようと、かまわないとおもっていたから。

 だけど、今は違う。


「矢神くん」

 耳もとで魔女がささやくような声がした。

 いつの間にか律子さんがすぐ横に立っている。


「これ以上、華ちゃんを傷つけたら許さないからね」


 なにが傷つくところを見たくない、だ。

 結局、俺がいちばん西森を傷つけてるんじゃないか。





 水曜の朝、屋上に行くと西森がフェンスにもたれて煙草を吸っていた。

 曇っているせいか、今朝は屋上を渡る風が涼しい。明日、八月の終わりとともに夏が終わるのだった。

「禁煙するんじゃなかったのか?」
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