上司のヒミツと私のウソ
 一旦教師モードに切り替わった律子さんの尋問から逃れることは、まず不可能といっていい。観念するほかなかった。


「あきれた。よくそんなひどいことができるわね」


 西森との関係の一部始終を説明すると、律子さんの目がますます透明度を増して大きくなった。

 そして刺々しい台詞をカウンターの上に残したきり、黙って店の掃除を始めた。


 なんといわれてもしょうがない。


 説明している途中で、自分でも激しい自己嫌悪に苛まれた。

 今さらだが、どうしてあんなひどい真似ができたのかとおもう。追いつめられて、平常の判断ができなくなっていたとしかおもえない。


 もちろん、罪の意識をまったく感じていなかったわけではなかった。


 だからこそ早々に西森と別れる決断をしたのだが、でもあのときは、今ほど西森の気持ちを考えていなかった。というか、気にならなかった。

 わざわざマンションまで訪ねてきた西森をドアの前で冷たく追い返したときも、真相がばれてすべてを告白せざるを得なくなったときも。
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