上司のヒミツと私のウソ
 矢神は席にもどり、なにごともなかったように仕事にとりかかる。

 目の前には安田がいて、胸の前で控えめに指を掲げ、「OK」のサインを送っている。


 企画部に残れてよかった。

 よかったけど……。


──なんか、猛烈に腹が立つ。


 午前中ずっとムカムカしていた私の前で、矢神は平然と仕事をこなして、何食わぬ顔をして谷部長と談笑したり、取引先の担当者からの電話に冗談まじりに受け答えをしたりしていた。


 昼休みに食堂へ行き、女性社員が決して手を出さない日替わりスペシャルランチを注文した。

 本日のメインはキャベツの千切りを覆い隠す巨大なチキンカツ。

 ボリューム満点、カロリーも満点。スペシャルと銘打ちながらも値段は七五〇円。

 後日おとずれる体重計の恐怖さえ無視すれば、やけ食いにはぴったりのメニュー。


「なに怒ってんの?」


 安田はいつものサラダランチを注文し、目の前で私が巨大チキンカツを急ピッチで平らげるのをふしぎそうに眺めている。
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