上司のヒミツと私のウソ
矢神に注意される前に、私は手早くテーブルの上に残っている誰かが置き忘れていった企画案のプリントをつかんで、手の中でくしゃくしゃに丸めた。
「残しとけ」
「いえ、だから、これはちょっとした思いつきで……はい?」
矢神は私と目を合わさないまま席を立った。
静かな会議室に「その案も進めていいから」というそっけない矢神の声がふわりと響き、言葉の意味を頭の中で反芻しているうちに、矢神が私の前を通り過ぎて会議室のドアに向かう。
ドアノブを握ったところで立ち止まり、声だけが届く。
「今日は早く帰れ」
矢神の背中がドアのむこうに消えた。
まだ混乱の波が渦巻く会議室にひとりとり残された私は、しばらく立ちつくしたまま考えこんでしまった。
認めるのは悔しい気もするけれど、矢神のひとことが入れたてのミルクティーのように私の心を温めていた。
「残しとけ」
「いえ、だから、これはちょっとした思いつきで……はい?」
矢神は私と目を合わさないまま席を立った。
静かな会議室に「その案も進めていいから」というそっけない矢神の声がふわりと響き、言葉の意味を頭の中で反芻しているうちに、矢神が私の前を通り過ぎて会議室のドアに向かう。
ドアノブを握ったところで立ち止まり、声だけが届く。
「今日は早く帰れ」
矢神の背中がドアのむこうに消えた。
まだ混乱の波が渦巻く会議室にひとりとり残された私は、しばらく立ちつくしたまま考えこんでしまった。
認めるのは悔しい気もするけれど、矢神のひとことが入れたてのミルクティーのように私の心を温めていた。