上司のヒミツと私のウソ
「わかりました。私、片付けるのは得意なんです。任せてください」

 極上の笑顔を返し、鍵を受け取って部屋を出た。


 企画部の倉庫はこのフロアの北端、非常階段のすぐ横にある。廊下の突き当たりなので、めったに人が通らない場所だ。

 私はキーホルダーの付いた鍵を振り回し、わざとパンプスの踵を大きく鳴らして廊下を突き進んだ。


 なにが「仕事は別」だ。

 おもいっきり公私混同してくれて!


 鍵を開けて倉庫の中に入ると、中は真っ暗だった。気のせいか埃っぽい。部屋の電気をつける。

 二十畳くらいの狭い部屋に、天井まで届く書棚が人ひとり通る空間を残してびっしり並んでいた。

 書棚はどれも満杯で、隙間に無理やり突っ込んだとおもわれる紙の束が今にも落ちてきそうだった。

 さらに、書棚に収まりきらない資料やファイル、カタログやポスターが詰め込まれた段ボール箱、展示会で使用したとおもわれるパネルなどの販促物が床に散乱し、歩くこともままならない。


 なにこれ。
< 50 / 663 >

この作品をシェア

pagetop