上司のヒミツと私のウソ
「私ではなく、私が信頼を置く部下にこの企画を担当させます。もちろん中途半端な仕事はさせませんし、場合によっては私もほかのデザイナーも手伝います。それでもかまいませんか?」

「……もちろん」


 形容しがたい安堵に包まれ、凍りついていた心臓が一瞬で溶ける。見ると、相田の顔に微苦笑がひろがっていた。


「変わりましたね、お互いに。昔は、自分の仕事を他人に任せることなどできなかった。やはり、三年前とは違うようです」





 気がつくと、九月の最終週になっていた。

「課長も出席しますよね?」

 金曜の午後五時を過ぎたころに、荒谷敬子がわざわざデスクにやってきて念押ししてきた。七時からの送別会のことだ。


 販売企画課の松本由起が、来月で退職することが決まっていた。

 最終出社日は今日である。
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