上司のヒミツと私のウソ
 荒谷のうわさ好きは未だ健在のようだが、前回のお灸が効いたのか、最近は少しばかりおとなしい。

 夕方から出かけるので遅れるかもしれないと告げると、幹事の荒谷は店の地図と自分の携帯電話の番号をプリントした用紙を持ってきた。「遅くなるようなら電話してください。二次会の場所を伝えますから」という。


「何人くらい参加するんだ?」

「ほぼ企画部全員です」


 病み上がりの西森が参加するのかどうか気になったが、もちろんそんなことは荒谷には聞けない。

 西森は松本の退職をどう受け止めただろう。自分のせいだと思いこんでいないだろうか。


 この一週間あまり、西森が俺の前で見せるよそよそしい態度は相変わらずだった。

 少しでも近づこうものなら、以前にも増して隙のない笑顔をまとい完全武装してくる。


 なにを話しかけても常に同じ反応。サイボーグを相手にしているようだった。むろん、屋上には一度たりとも顔を見せていない。


 ならばと安田に探りを入れてみるつもりだったのだが、今週は激しく仕事が立てこんで、そんな余裕もなかった。
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