上司のヒミツと私のウソ
 毎日職場で西森と会っているのに、まったく満たされず、日ごとに会いたいという気持ちが募る。自分でも収拾のつかないおかしな心境に追いこまれていた。


 出先からもどると午後八時近くになっていた。企画部の執務室はもぬけの殻だった。急いで身支度をし、会社からそう遠くない一次会の場所に向かう。


 社内の飲み会によく利用されるモダンな雰囲気の居酒屋で、何度か足を運んだことがあった。そういえば、西森の歓迎会もここだったような気がする。いろいろあったのでずいぶん昔のように感じるが、たった半年前だ。


 広めの個室に案内されると、すでに相当盛り上がっていた。空いている席を見つけて適当に座る。幹事の荒谷がすぐに酒と料理を注文してくれた。


 さりげなく室内を見回し、西森の姿を探した。店の中が薄暗い上に誰彼なくひんぱんに席を入れ替わるので、よくわからない。


「お疲れさまです」


 目の前にいた若い女性社員を押しのけて、どしんと安田が陣どった。

 ビール瓶とグラスを手にしている。
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