上司のヒミツと私のウソ
 それから安田が他愛ない世間話を始めたので、荒谷はたちまち興味を失って席を離れていった。


「あーあ。ほんとうにつまらない」

 荒谷が席を離れるや否や、安田が愚痴をこぼす。


「黙っててあげたんですから、付き合ってくださいよ」

「いいかげん、飲み会のたびに挑みかかるのはやめろ」

「なんですか、それ。まるで私のほうが課長より弱いみたいに聞こえるじゃないですか」

「そんなこと、どっちでもいい」

「よくありません」


 安田は子供のように唇を尖らせて「課長を負かして、企画部一の酒豪になるんです」などと真剣な顔でいう。

 ばかばかしいが笑えた。しかたなく、勝負を受けることにする。


 今や恒例になりつつあるうわばみふたりの対決を見学しようと、何人かが集まってきた。まわりが揶揄するのを一向に気にせず、安田はどんどん酒を追加する。


 安田に付き合い、まわりの連中の冷やかしに答えながら、ときどき西森のようすを見ていた。
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