上司のヒミツと私のウソ
 あんな不誠実で冷酷で自分勝手な男がまだ好きだなんて、私は救いようのないバカだ。

 あと何回、矢神に騙されて裏切られて傷つけば、顔も見たくなくなるくらい大嫌いになれるんだろう。


「じゃあ切るね」

「安田」


 離れようとする安田の声を、とっさに引き留めてしまう。


「なに」

「ごめん」


 安田が押し黙る。


「ごめん」


 もう一度いって、私は電話を切った。





 週明けの月曜は、会社を休みたいほど気が重かった。

 憂鬱な足どりで出社すると、矢神は朝から席を外していた。朝礼が始まっても姿を見せず、私は矢神と顔を合わせずにすんでほっとしていた。
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