上司のヒミツと私のウソ
 窓に、立っている私の姿が映っていた。

 福原さんは、窓に映る私を見ている。


「なんかさ。閉ざされてる感じがして、ほっとするんだよね。みんな、雨に閉ざされてて、誰ともつながってなくて」


 福原さんは窓越しにほほえみかけ、「今、引いた?」と聞く。

 私はかぶりを振って、窓際に歩みよった。


「ちょっと、わかるような気がします」


 福原さんと並んで、雨に濡れた夜の町を見下ろす。

 隣から、やさしい小さな笑い声が聞こえた。


「西森さんなら、そういうとおもった」

 そして、窓越しにではなく、隣にいる私のほうを見た。


「矢神さんと、なんかあったの?」


 唐突に聞かれて、私はとっさに目をそらした。

 どうして、平気なふりをすることができないんだろう、とおもった。

 福原さんは淋しい笑顔のまま、「あのひとは、いろいろと隠してることが多いんだろうなあ」とつぶやいた。
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