上司のヒミツと私のウソ
 デスクの引き出しから傘を取りだそうとすると、福原さんは笑って「いいよ」と断った。

「まだもう少し、かかりそうだから。そのうち止むだろ」

「でも……」

「西森さんは、もう帰ったほうがいいよ。ちょっと無理しすぎなんじゃない? また倒れたりしたらどうすんの」

「もう大丈夫です。すっかり全快しましたから。すみません、ご心配かけて」


 福原さんは、少しだけ淋しそうに笑った。


「だったらいいけど、西森さんってがんばりすぎるとこあるから」


 福原さんは窓際に立って、暗い窓の外をのぞきこんだ。

 雨の雫がついた窓の向こうに、林立するビルの黒い影が浮かんでいる。ところどころ灯りの点った小さな窓を、福原さんはぼんやり眺めている。


「夜の雨って、落ち着くとおもわない?」


 福原さんがぽつりという。
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