上司のヒミツと私のウソ
「なんだ、あんたか」

 煙を吐きながら、つまらなそうにいった。


 私は煙草を持ってこなかったことを後悔した。急いでいたから化粧ポーチまで気が回らなかった。

 煙草がないと手持ち無沙汰だ。両手のもって行き場がなくて、そわそわする。どうしていいかわからない。


「休憩しにきたんじゃないのか」

 挙動不審な私を見て、矢神が訝る。だけど、すぐに皮肉な笑みに取って代わる。


「ひょっとして俺を探しにきたとか?」

「違います」


 私は腹立ちまぎれに両手を組んで、中央のフェンスに背中をあずけた。

「終わりましたよ。倉庫の片付け」

「あ、そう」

「つぎはなにをやればいいんですか。窓拭きですか? それともトイレ掃除ですか?」

「そんなに掃除がしたいなら、どうぞご自由に」
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