最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜

「恥ずかしかったから……」


そう言って恭子さんは、顔をポッと紅く染めた。


「何がですか?」

「ここじゃ言いづらいし、言わなくても解るでしょ?」

「ん……恭子さんが初めてだった事ですか?」

「ちょっ、声が大きい」


と言って恭子さんは横をチラッと見た。そちらに目をやれば、いつの間にか隣のテーブルに事務服を着た二人連れの若いOLがいて、恭子さんは彼女達を気にしているらしい。しかし彼女達を見た限り、自分達の話に夢中でこっちの会話は聞こえていないと思われた。


「その事ですか?」


俺は声をいくぶん落としてもう一度聞いてみた。


「それもあるけど、私、お芝居したから、それを川田君に言われるのが恥ずかしかったの」

「そうですよ……。なんであんな事したんですか?」

「だって、本当の事を知ったら、あなた引いてたでしょ?」


そう言われれば、そうかも。もし恭子さんが処女だと知ってたら、もっと優しく……と思ったが、それ以前にやらなかったかもしれないな。


「すっかり騙されましたよ……」


俺は答える代わりにそう言った。


「でしょ? 一世一代の大芝居だったの。内心はドキドキだったわ」


と言ってエヘッと恭子さんは笑い、その顔がすっごく可愛いなと俺は思った。

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