最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
俺はあれから2回それを聞いた。しかも2回目は、つい2日ほど前の事だ。
「うーん……」
さすがの田上も言葉に詰まったようだが、すぐに気を取り直したかのように俺の目をしっかりと見据え、
「川田よ、我慢だ」
と言った。
「はあ?」
「ちょっとばかり長引いてる感じはするが、いずれにしても時間の問題さ」
「そうかあ?」
「そうさ。前にも言ったと思うが、五十嵐女史の深層心理には未だに中嶋さんがいるわけだが、いつかは消えておまえと入れ替わるはずだ。既に夢の中では二人の間で揺れてるかもしれないぞ?」
「恭子さんがか?」
「ああ。案外五十嵐女史自身、不思議に思ってるかもしれない。“私は川田君が好きなのに、どうしていつまでも中嶋君の夢を見るんだろう”ってな」
「そうかなあ……」
「おまえだってそういう経験があるだろ?」
「さあ」
「俺はあるよ。死んだ親父の夢をよく見るんだが、夢の中じゃ死んでいないんだ。ピンピンしてるんだ。俺は深層心理じゃ、親父の死を受け入れてないんだと思う」
「そうか。それは気の毒に……」
「いや、いいんだ」
「でもさ、こうは考えられないか? その深層心理こそが、その人の本心なんだ、と」
「そ、それは……」
「どうなんだ?」
「……そうかもだな」
やっぱりじゃねえか。やっぱり恭子さんが好きなのは俺じゃなく、中嶋さんなんだ。くそッ。