とけていく…
二.
 朝、目覚めると、柔らかな光で部屋が満たされていた。それに誘われるように、ベッドから降りて、涼はカーテンを開ける。

 空にはぽっかりと浮かんだ雲。そしてサンサンと輝く太陽の光が、起きたばかりの彼の目を容赦なく照らした。彼は目を細めながら逃げるようにキッチンに向かった。

 冷蔵庫から麦茶を取り出し、グラスに注ぐと、寝ぼけた頭を覚ますようにして冷たい麦茶に口つけた。

 まるで身体中に染み渡るようだった。その快感を十分堪能した後、飲みかけのグラスを手にしたまま、彼はリビングのど真ん中に陣取るグランドピアノの椅子に座った。

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