とけていく…
 今度彼が向かった先は、病院だった。

 涼は義郎と一緒に住む予定だったが、義郎が思っていた以上に容体が思わしくなく、入院を余儀なくされてしまったのだ。

 いつもの病室に顔を出し、椅子に座る。

「親父」

 軽く目を閉じていた義郎に声をかけると、彼は光がさしたように顔をほころばせていた。

「おぉ、来たのか」

「渡すものがあるんだよ」

 そう言って、彼はカバンのサイドポケットから、チケットを取り出した。

「コンクールのチケット。絶対… 見に来いよ」

 サイドテーブルに二枚、チケットを置いた。

「楽しみにしてるよ」

 穏やかに微笑む義郎をそ見ると、病室を去った。そして最後の目的地に向けて、陽炎で揺れる暑い気温の中、歩き出した。



< 156 / 213 >

この作品をシェア

pagetop