202号室の、お兄さん☆【完】


「子猫探し、ですか?」

眠たそうなお兄さんが、首を傾げながら尋ねてきました。

今日のランチは三種類のパンらしく、クロワッサンとチーズパン、シナモンロールの良い匂いがお店の中に充満しています。

「白い毛並みで黒いぶちみたいです。写真もありましたが、可愛らしい赤ちゃん猫でした」

「……なる程、でもいきなりどうして猫を?」

焼きあがったクロワッサンをバスケットに入れながら、不思議そうに聞いてきました。



……10万円目当てだとは言えません。




昨日、千景ちゃんが業者さんに連絡したら、私たちが壊した壁は石膏ボードというものでできていて大工工事ですが、
壁紙は内装工事なのでした。

オマケに壁紙は部屋中全部変える事になり、2つの業者さんに頼んだら、7万円弱したのです!!!!

貧乏な私では、皆さんに黙って返せない額なのです。


「今後の貯蓄に……。
お兄さんは孔礼寺、どうでした?
岳理さんに苛められませんでした?」


寝不足オーラ全開のお兄さんが少し心配なのですが、そう聞くとお兄さんは嬉しそうな笑顔で答えてくれました。


「いいえ! 岳理くんは4年ぶりだからと大はしゃぎで楽しかったですよ」

が……岳理さんが大はしゃぎ?
想像できない。
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