202号室の、お兄さん☆【完】
そう言われ、連れて行かれたのは、岳理さんの仕事部屋の更に奥。
その廊下でまた立ち止まり、また髪をかきあげました。
――頬にはまだアウトローな引っ掻き傷がありました。
「何があったのですか?」
襖の前で立ち止まっている岳理さんに聞くと、岳理さんは襖を指差しました。
「この部屋で、鳴海が眠ってるんだ」
そう言って携帯を取り出すと時間を確認しました。
あと2分でシンデレラタイムの0時です。
すると、襖の向こう側から音がしました。
咄嗟に襖に近寄ろうとして、岳理さんに腕を掴まれた瞬間、
「うわぁああああぁあぁ!!!!!」
「!!」
お兄さんの叫び声がしました。
「だ、出して!! 此処から出して!!! 出して下さい!!!」
ガンガンと襖を叩きますが、
襖なんて鍵も無いから開けられるはずなんです。
「うわぁああああああぁあぁ!!!!!!」
ガンガンと……頭をぶつけているのかお兄さんは酷い錯乱状態です。
「が、岳理さん!! 腕を放して下さい!!」
お兄さんに駆け寄りたくてそう言うと、岳理さんはひどく落ち着いていました。
「あの日から、鳴海は毎日戦ってんだ」
そう言って、
私の腕を放しました。