202号室の、お兄さん☆【完】
「お兄さん!!!」
襖を開けて部屋に飛び込むと、飛び込んですぐのフローリングの床の上で、お兄さんは丸まっていました。
「ごめっ……さい! も、出たいなんて言いません!!」
「お兄さん! お兄さん!」
私が急いでお兄さんの肩に触れると、ビクッと肩を奮わせてお兄さんは飛び退きました。
「――近づいたら、暴れるぜ。俺みたいに頬にケガするぞ」
廊下から、岳理さんがそう言いますが……、
お、お兄さんはもしや……。
もしや私が壁を壊したあの日から、
ま……、毎日こんな風に戦っていたのでしょうか?
「みかど!」
岳理さんの制止を振り切り、私はお兄さんに近づきました。
震えて怯える、小さな子どもに。
「お兄さん……。お兄さん……」
私がそう言うと、少しだけ顔を此方に向けてくれました。
だから私は、
抱きしめて、抱きしめて、抱きしめて、
二度と離さないように抱きしめます。
0時のシンデレラタイムになって、魔法が溶ける時間になっても、
抱きしめて、抱きしめて、抱きしめて。
「私が此処にいます。
お、お兄さんの隣に居ます。ずっとずっと居ます」