202号室の、お兄さん☆【完】


わ、私が壁をぶち壊したのに、


お……お兄さんを1人にしないって、絶対力になるって、

そう思ってたのに、

なのに、私はお兄さんが1人で戦っているのを知らなかったんだ……。



「みかど……ちゃん?」


急にバッと両手で肩を引き離され、お兄さんが呆然と此方を見ました。


「あ……」

ポロポロと涙を溢れさせたお兄さんは、私を突き飛ばして廊下へ飛び出しました。



「鳴海!」

激しく暴れるお兄さんを捕まえたのは、――岳理さんです。


長い縁側で、羽交い締めにされたお兄さんは何とか逃げ出そうと暴れますが、岳理さんは引っ掻かれてもお兄さんを離しません。


「お兄さん! お兄さんお兄さんお兄さんお兄さん!」

私も正面から抱きしめると、お兄さんは少しだけ動きを抑えてくれました。



「鳴海、俺が呼んだんだ。
――落ち着け」

そう右手で両目を覆われたお兄さんは、声を殺して、



静かに静かに、泣き出しました。


縁側には、お兄さんの嗚咽が響きます。


て、訂正します。


お兄さんは、岳理さんに支えて貰いながら、


1人でこの闇を戦っていたんです。


 
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