プラスティック・ラブ
第三章 念願叶って
朱く色づいた光がブラインドの隙間から差し込み
目の前のパソコンのモニターに反射した。
見辛くなった画面に 思わず舌打ちをした私は
もう夕方か・・・と小さく呟いて
ブラインドの角度を調整する為に立ち上がり窓辺へと歩み寄った。


黄昏に染まりゆく街を見おろしながら ふぅ、と短く息を吐いた。
昼休み明けから始めた資料の作成に思いのほか時間がかかっているのは
修正・変更が頻繁に入ってきたせいだ。あまり時間に猶予のない案件で
向かいの会議室で行われている会議と同時進行で資料を作成しているのだから 
仕方がないといえば仕方がないのだけれど
まるまる1ページごと差し替えなんていう酷な変更には悲鳴を上げたくなった。


結局 修正案の最終版が手元に来たのは今から30分前。
会議の終了と同時だった。先刻 修正した所がさらに修正されている。
だったら途中で修正させるなよな、と思わずぼやいてしまった。
ぱらぱらと確認したところ、追加修正の分量はたいして多くはないけれど
細かく何か所にも入っているので、ちょっと手間がかかりそうだ。


できれば今日中に終わらせたい。でなければ週明けの報告会に間に合わない。
シフト制勤務者にとって、週末に休日が取れるのは貴重だ。
明日はその貴重な休日なのだ。出勤は避けたい。


こりゃ残業必須だな・・・


今日もまた帰宅途中でコンビニに寄ることになりそうだ。
これで何日目になるだろうか。
グルメではないし、さして食にこだわりもないし好き嫌いもないけれど
こう何日もコンビニ食が続くとさすがに飽きてくる。
かといって疲れた体で夜遅くにお店に食べに行くのは億劫だし
帰宅してから作るのはもっと億劫だから
結局 コンビニのお世話になるのだけれど。


とりあえず、今日が終われば明日はお休み。
よし!頑張ろ、と小さくつぶやいて気合いを入れた。
こんな風に残業が続くことは珍しくない。多忙なのも然り。
でもそれを不満に思ったことはない。
仕事は好きだしやりがいも大いに感じている。
子供のころから憧れていた御園ホテルに就職できたのだから。

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