プラスティック・ラブ

ワインに火照った頬を優しく撫でる夜風が心地よい。
隣を歩く恋人の腕にいつもより甘く両腕を縋るように絡めたのは
久しぶりの逢瀬に高くなってしまった熱を
酔ったふりでさり気なく伝えるためのボディランゲージ。
雅也とはつきあって長いのに ふりや勢いでなければ
自分からは甘えることができないなんて、と私が自嘲気味に小さく肩を竦めると
「どうした?」と柔らかな声と甘やかな視線が降りて来た。


「別に。なんにも」
「酔った?」
「ん。ちょっとだけ」
「いつもの半分も飲んでないのに?」
「疲れてるからかな」
「なら、不肖このワタクシめが姫のお疲れを癒してさしあげましょうか?」



ベッドでゆっくり、なんて耳元で艶かしく囁く恋人の耳を軽く引っ張った。



「それって、もっと疲れるんじゃないの?」



ち、ち、ち、と人差し指を小さく振った雅也は
「わかってないなぁ」とため息をつく。



「女性ホルモンの分泌を促して、朝まで熟睡できるから
お肌もしっとりつるっつる。ソン所そこらのエステよりずっと効果があるって」

「ホントかなあ・・・」



「騙されたと思って試してみ?」と不意に雅也の唇が重なって
しっとりと私の上下の唇を交互に食んだ。
優しく柔らかく触れ合う甘くてくすぐったいようなキスに心が満たされる。
キスがこんなに安心できるものだと、その唇で教えてくれたのは雅也。
いたわるように、慈しむように、大切に思う気持ちが熱と一緒に伝わってくる。


「雅也」
「ん」
「・・・試してみる」
「オーライ」



もう一度、ガラス越しの瞳が近づいて、私はゆっくり瞼を閉じた。
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