プラスティック・ラブ

『芦田くん』から『雅也』になるまで1年。それからキスまで3ヶ月。
その先を許したのは・・・雅也と呼ぶようになってから1年が過ぎた頃。
正真正銘の恋人同士になろう、と言われたあの雨の日から2年が過ぎていた。


何も勿体つけていたわけじゃない。恋はいつも私が先に「思う」側だったのに
こんな風に「思われる」側になったのが初めてで
自分の気持ちに自信が持てなかったから。
だからこそ怖くて踏み出せなかったというのもある。
それに「俺の理性って大したもんだわ」と苦笑いした雅也には
申し訳なく思うけれど、初めての男性の理想像と彼は少しだけ・・・違ったから。



初めての男性は初めて好きになったあの人がいい――



そんな過ぎし日に抱いた淡い思いを
かすかに残したまま彼に抱かれた夜・・・
涙してしまったのは破瓜の痛みだけではない。




「彩夏 ホラしっかりして」
「・・・ん」




優しく柔らかく唇が触れ合う感触に
意識の輪郭が徐々にぼやけて脱力していく身体を
腰に回された雅也の腕が支えてくれたのまでは覚えている。
その後は細切れな感覚と感触だけしか残っていない。




目が覚めて・・・
隣に眠る雅也のむき出しの肩と彼のパジャマを素肌に羽織っている自分と
差し込む朝日がブラインドから漏れて落とす横縞の影と
頬に触れるシーツの香りでここがどこなのか気づく。



久しぶりの雅也の部屋はその持ち主と同じように私を優しく包んでくれる。


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