プラスティック・ラブ
第四章 二人の甘やかな距離 

メールは際限なく。電話は大体2日おき。
休日の予定はデートよりもそれぞれの人間関係と
プライベートな予定を優先する。
そのかわり三週目の休日は二人きりで過す。


これが社会へ出てからの彩夏とのシチュエーション。
それは今も変わらない。最高に上手くいってる俺達の甘やかな距離。
彩夏は誰より愛しい俺のお姫様だ。


そのお姫様は酔いが回って半分寝かかっているくせに
絶対にシャワーを使わなきゃ寝れないと言い張るから
仕方なくバスルームへ押し込んでブラウスのボタンを外すのを手伝ってやった。


「あ~~雅也、えっちー」
「はい、そうです」


まったく、何がえっち、だ。
脱力してまともにボタンが外せないでいるくせに。


ボタンを全部外してやって「あとは自分で」と声をかけて
シャワーのコックを捻り、湯が温まったところで脱衣室へ戻った。
スカートを落とし、下着だけになった気だるそうな背中を
そっと抱きしめて肩口に二度キスをした。


「ん・・・も」

ダメ、と吐息交じりの囁きをこぼしながら身を捩った彩夏の唇に
俺は軽く触れるだけのキスを落とした。


「一緒に入ろうか?」


耳元に囁きながら、ブラのストラップを肩から落としホックを外した。


「やぁよ」
「入りたい」
「ダ・メ」
「彩夏ちゃん、冷たい」
「お風呂くらい一人でゆっくり入らせて」
「あんまりゆっくりしてたら乱入する」
「ダメよ。大人しく待ってなさい」


腰に回した俺の腕を解く連れない姫のうなじにキスをして
フラれた俺は一人寂しくベッドで待つことにした。


仰向けになって目を閉じると窓を打つ雨音がかすかにするのに気付いた。
いつの間に降り出したのだろう。
他に音のない中で雨音だけを聞いていたら
ふと 脳裏をよぎったのは、彩夏とあいつ・・・成瀬の相合傘。
もう何年も昔のことなのに、やけに鮮明に思い出せるのが忌々しいが
あれが彩夏との距離を詰めるきっかけだった。
絶好の機会だと思った。これを逃してはならないと。
彩夏に惹かれていた俺は何とか彼女とお近づきになれる手立てはないものかと
思っていたからだ。

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