好きだったよ、ずっと。【完】
「裕也くんの元カノが現れて、なつこは身を引いたのよ。裕也くんの前から、姿を消したの」



自分のことじゃないのに、花音さんの言葉を聞いて胸が苦しくなった。



大好きな彼氏を諦めるって、どんな思いだったんだろう…。



「わたしね、裕也と五つも年が違うのね」



わたしの表情を見てか、なつこさんはポツリポツリと話してくれた。



「だから、裕也が沙英子さんのことを忘れられないのなら、わたしが消えようと思ったの。それで沙英子さんとうまくいくのなら、って。三十路のわたしが年下の男の子を縛っちゃいけないって」



そんなことって、出来るものなの…?



いくら五つ年が違ったって、恋に年なんか関係ない。



なつこさんの言葉にチラリと裕也さんを見れば、バッチリと目が合って。



「……なつこが、ボクの前からいなくなった時、頭が真っ白になりました」



わたしと目が合ったからなのか、裕也さんも当時のことを教えてくれた。



「前日まで旅行して楽しんで、連絡するとなつこから言われていたのに来なくて。ボクが会いに行ったら部屋はもぬけの殻で、会社に行けば辞めたと言われて」



「え、なつこさん。会社も辞めたんですか…?」



決心が強い、強すぎるでしょ…。



「そうなのよ!しかも親友のわたしにも、何も言わないでよ?ありえないわ!!」



当時を思い出したのか、花音さんは一人プリプリと怒っていた。



それをなつこさんは、苦笑いで見ていた。
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