いと甘し。



とうとうヤケを起こしたのか、ケダモノと言われたのがかんに障ったのか、斎藤はぶすっとしたまま立ち上がった。


「はいはいそうでしたね。俺はどうせケダモノですよ」


口を付けてないお茶が入ったグラスの表面は、汗をかいていた。
ちょっと言い過ぎたかな、と罪悪感を感じたが、まばたきもしないうちに一瞬で忘れてしまった。



「古田」と、出口のところにいる斎藤が振り返った。ブレザーのボタンが夕日に反射してチカチカ眩しい。私は思わず目を細めて、偉そうにズボンのポッケに手を入れている彼を見た。



「俺さ、これでも申し訳ないって思ってるから」

「…どういう意味よ」

「分かってんだろ。鈍感なふりすんなよ」



分からないよ、と言えなかったのは斎藤の言う通りだったから。

見透かされた気分とは、多分このことを言うのだろう。

桜吹雪を見てピン札の野口さんと出会って、今日は最高な日だと思っていたのに。

今夜寝る前に思い出すのは、たぶん偉そうに口をへの字にまげたあいつの顔だろう。何が申し訳ない、だ。そんなこと微塵も思ってないくせに!



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