いと甘し。



あれから10年経ったが、タエさんは変わらず美人である。近所のおじいちゃん達から評判も良く、見た目が変わらないことからシーラカンスと呼ばれてる。

それを聞いたタエさんは「誰が生きた化石だ!魚と一緒にすんじゃないよ!」と目をむいていたけれど。





店の外はポカポカと暖かくて、気持ちが良かった。いたるとこそびえ立つ桜の木が春だ春だ!と主張している。
風に揺れる花の集合体は、まるでイチゴ味の綿あめだ。食べることができるんじゃないかって、ちょっと本気で思う。



なごみ屋の左には文房具屋「あかし」そして右にはパン屋「ルシール」。どちらもタエさんの同級生が経営している店だ。

ちなみに「あかし」の店主である小野寺さんは、しょっちゅうタエさんに贈り物をして求愛活動をしている。無論彼女はシャー芯を貰ったって三色ボールペンを貰ったってなびかない。そんなんで目がハートになるのは文房具オタクくらいだろうけど。



私は店の脇に置いてあった竹箒を持ち、アスファルトの上に散らばっている葉っぱや桜の花びらを掃いた。

その間にも、ザアアッと風が木を撫でて花びらを地上へ落とす。これぞまさに桜吹雪。

今日は良いものをみたなと思い、少し目を細めた。すると、あんず橋のほうからなにやら女の子達の話し声が聞こえてきた。

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