シュガーメロディ~冷たいキミへ~
「……?」
何も言われないのを不思議に思って顔を上げると、その瞬間、ふわりと肩が温かくなった。
「え……」
その温もりの正体は、さっきまで水無月くんが羽織っていたグレーのパーカー。
「……貸す。ないよりいいだろ」
それは夕陽のオレンジ色なのか、それとも。
気のせいかもしれないけど、微かに顔を赤く染めた水無月くん。
「あとで連絡するから、今日はごめん」
「……うん。これ、ありがとう。あとで返すね」
肩に羽織らせてくれたパーカーに腕を通しながら言うと、水無月くんは頷いた。
「ん」
「あ、水無月くん」
くるりと、水無月くんが方向転換をしようとしたのを見て、思わず呼びとめると視線だけをこちらに向けてくれた。
「なに」
「……後夜祭、頑張ってね」
まっすぐに私に向いた視線が、今更なんだかくすぐったくなって。
だけど、そんなくすぐったさが嫌じゃなくて。
今まででいちばん自然な笑顔だったかも、なんて思う。
ちゃんと謝れたわけじゃないのに、不思議なくらいに心は軽くなっていた。
校舎に戻る足取りも、ずっと軽くて。
なんだか、心がふわふわと飛んでいきそうなくらいの心地良さを感じていた。