甘い囁きが欲しい




「そんな男、やめちまえ」



ガタっと小さく音がして、部長の座っていた椅子が近づき頭を子供を落ち着かせるようになでていた腕にあっという間に体を引っ張られた。



「優香ちゃんの、そういう姿も見せられないような男、やめろ」



お酒と、汗と、鈴木部長の香りに包まれた暖かい温度になぜ私は安心してしまったのだろうか。
なぜ、求めた人にこの暖かさはなかったのだろうか。


言葉にしたくても、何を言葉にしていいか分からずに。
涙は止まることを知らずにあふれてくる。




ほんとうは、誰かに言って欲しかったのかもしれない
そうすれば、反発することも、もっと彼はいい人なのだと、反論することで彼への気持ちを無理やりにでも確固たるものにしたかもしれない。




でも、・・・でも、人が悪すぎた。

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