お茶の香りのパイロット
ドレス姿のまま強引にフィアはマーティーに引っ張って行かれたのは、大きなテレビモニターのある部屋だった。


「毎度我が妹に負けを食わされている場所だ。
君もこっち側の人間だってわかったからには、対戦していただこうかと思ってね。」


「対戦って・・・まさかこれ・・・ゲーム?」


「そう、対戦型の戦争ゲームがいっぱいなんだ。
こういう時期におおっぴらにはできないだろ。
しかも、僕はビジネスマンの典型だし、こんなおたく部屋があるなんてわかったらどこからかマジで総攻撃されるかもしれないじゃないか。

だからね・・・こう極秘に部屋を改造しておいたというわけさ。
さすがにアルミスみたいに本物を開発することはできないからね。
じゃ、ちょっと練習して・・・つきあって。」



「え、ええ。(なんか最初会ったときからしたら印象変わっちゃうな。
典型的なプレイボーイだと思っていたら女性はうわべだけのおたく社長とはね・・・。)」


「では、レディ・・・ゴー!」


「ま、マーティーさん・・・お手柔らかにして!
わ、私は初心者なんだから・・・きゃぁ!」


「手加減なんかできるかよ!フィアは器用すぎるだろ。
もう僕が押され始めてる・・・うう・・・きびしぃーーー!」


フィアはついクスクス笑ってしまう。
マーティーがこんなにいたずらっ子のような人物だったとは。
そして、必死になっているときの表情はなんとなく、アルミスが設計図とにらめっこしているときとさほど差がないような気がした。


「大人なのに・・・意外!」


「子ども扱いすんなよ!それと、このことはベラベラしゃべるな。
しゃべったらアルミスにあることないこと言いつけてやるからなっ!」


「もう・・・マーティーさんってば。あははは。」


「うん、やっと普通に笑ってくれたな。
第一級戦闘配備の顔は勘弁してほしかったからね。」


「私そんな顔してました?」


「ああ、ものすごい警戒態勢だった。
僕はまるでテロ組織の親玉かってくらいね。
もう、悲しいやら。なさけないやら・・・つらかったよぉ。」


「ごめんなさい・・・。でもマーティーさんってCEOだけあってずる賢いですね。」


「な、賢くて・・・尊敬するとかステキとかいうところじゃないの?」


「こんな部屋連れて来たり、無防備さをアピールされたんですよね。」


「まぁ・・・そうなるかな。
僕は、オクテの女の子を怖がらせる迫り方はしないのを強調したかっただけなんだけどな。

だけど、本当にずる賢い大人にはついて行かないことだよ。
君はたまたま会った相手がいい大人だっただけなんだからね。」


「ふふっ、そうですね。そういうことにしておきます。
楽しかったです。そろそろ着替えて休まないと。
明日は妹さんをお連れしてもどりますから。」


「ぜひ、この続きを遊びにきてくれよ。
妹はきっとなかなかもどってくれなさそうなんでね。」


「私も、ここにはとくに用事はないんですけど・・・。
いつの日かまた・・・です。」


「しょうがない、またな。」
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