お茶の香りのパイロット
ルイリードの言葉にフィアはびっくりした。

(大切なこと・・・そう、私にとっては大切なこと・・・。)


「結界を張られた世界なんでしょ。
ここからアルミスやラーガに連絡はとれない。

私の力ではどうにもならないんでしょ。
動きに制限があって、その制限の中でしか生きられないのなら、生き延びるためなら、すべてを受け入れてあがくしかないわ。」


「大人的な考え方してるんだな。」



「もし、私の夢と似通っていたとしたら、あなたに夜の説明はしてほしくないし。」



「はずかしいか?
どんなに感じていたか、どんな声をあげていたかなんて言われたら?
言わないよ。そこまで野暮なことはしない。

けど、君の想像どおり契りは結んだから俺は全力で君を守ると約束しよう。
それともうしばらくしたら、やっと復興へとがんばっている人たちを打ちのめすようなことが起こる。

それを俺はくい止めることになる。
その後は・・・。」



「何を隠しているの?それもまだ言えないの?
あなたがくい止めたら世界が平和になるの?」


「わからない・・・。」


ルイリードの暗い表情からフィアにはその後が彼にとって、とてもつらい結末になることくらいは察しがついた。


「何もかもひとりで背負い込むつもりなの?」



「さあな・・・。それより、夕飯だ。
リクが用意しておいてくれたから、食べようぜ。」


「もしかして・・・待っててくれたの?
それと・・・もしかして・・・あなたが温めてくれるの?」



「ああ。俺が調理したら嫌か?
できるのはお茶をいれるだけじゃないんだぞ。

簡単な料理くらい全部用意できる。
よかったら、皿とか並べるのを手伝ってくれないかな。」


「いいわよ。」
(どうしてかしら・・・私、うれしそうに手伝ってる!
この人の行動って何だかアルミスに似てる気がするから?)




食事中はお互いの学生時代のときのことを話した。

フィアは12才のときの同じクラスの男の子からおっぱいが大きいと言われて、それからクラスのみんなに騒がれて男性不信に陥ったと話すと、ルイリードはクスクス笑って納得していた。


「大きいものは大きいと言うだろうな。小学生ならなおのことだ。
母親以外の女性のはじっくり見たことないしな。あははは。

けど、それは正常な男子の行動だと思う。
何も言わずにつけられっぱなしの方が気持ち悪いんじゃないのか?」


「そりゃそうだけど・・・女の子にとっては、かわいいしか言われない時期に胸ばかりじっと見られて、感想を言われる毎日なんてショックだわ。

ちょっぴり憧れてた先輩もそういう目で私を見てるんだって思ったら、何も言えなくなったし。
予備軍学校の入試のときも教官が『胸の筋肉を鍛えたのか?』って質問してきて、思わず銃で殺してやりたくなったくらいよ。」


「ぷっ・・・立派な筋肉だっただろうに。あ~はははは。」


「ルイリードさんまで・・・もう!」


「いや、俺はもうわかっちゃったから言わせてもらうけど、君のは筋肉じゃない。
それでいて女性らしく鍛えられていて、とてもきれいだ。

あ、俺のことはルイでいいから。
俺がルイでセイリールはセイと呼んでやってくれ。」


「ルイとセイね。・・・今頃ほめても許さないから。」


「ごちそうさま。俺はシャワー浴びて寝るから。
じゃ、明日の朝は早めにな。」



「逃げるの?私まだ聞きたいことがいっぱいあるのに!」


「すまない・・・疲れてるんだ。
明日の朝、セイの扱い方を教えてやる。」


「えっ!?セイの扱い方って・・・私が乗るの?」


「ああ、セイは2人乗りだから。」



ルイリードはそそくさと片付けをフィアに任せて浴室へいってしまった。
そして、言ったとおり、その日はフィアの前には現れずに寝室のベッドで寝てしまっていた。
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