世界で一番、ずるい恋。





下手くそでも構わない。

だから笑ってよ、律。




「うるせーよ、バカ」





身勝手な願いだってことは、分かってるよ。

だけどね、今の私には律しかいないから。


せめて、律にだけは笑っててほしいの。





「よーし、呼び込み頑張ろうね!」

「頼むから、頑張んな」

「!?」

「なんつー顔してんだよ。そんな顔してると客が逃げるぞ?」




悪戯にそう笑うと私から看板を奪った。


ーー良かった。


律、笑ってる。

ちゃんと、笑ってる。


貴方はまだ、ちゃんと笑えてる。



お願いだから、私なんかのせいで、笑顔を失わないで。

私なんかのせいで、黒く染まらないで。




だったらきっと、今すぐに協力するという彼を止めるべきなんだろう。


だけど、彼の優しさを利用して甘える私を、今だけはどうか見逃してください。


罰なら、ちゃんと受けるから。








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