それでも、課長が好きなんです!
 マンションへと到着すると、自宅のある二階へと階段を上る。
 でも今日は二階で足を止めず、さらに足を進めた。
 五階へたどり着いた時は息が切れていた。
 たしか、五階だったはずだ。
 ただ、部屋番号までは知らない。
 一件ずつインターホンを押して回る?
 いや、そんな馬鹿な。

 勢いで来てしまったけれど、どうすることも出来ずに途方に暮れる。
 出直そう……自宅に居ればいつか現れるかもしれないし。
 でもいつか、っていつだろう……。

 というかわたしと彼の関係って一体?
 暇があればうちへ遊びに来て、会話だってわたしは自分のことたくさん話しているような気がする。
 最初は一緒にいると信じられなくて緊張したけど、慣れれば気の抜けた明るい青年だと思う。
 友達……なんて言ったら、おこがましいだろうか。

 ただ、今会いたかった。
 理由はどうしても聞いてみたいことがあったんだ。
 ……ただそれだけだ。

「家で待つか……」

 肩を落とし、階段を降りようと一段目に足をかけた時だった。
 バンと勢いよくドアが開く音がして、振り向くと通路の先の部屋から人影が出てくるのが見えた。
 そして次の瞬間、パァンと高い音が空気に響くようにわたしのところまで伝わって身体を強張らせた。
 勢いよく駆け足で近づいてくる人影の肩が軽く肩にぶつかった。
 よろけるように壁に手をつくと、耳に階段を勢いよくか駆け降りていく足音が響いた。

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