助手席にピアス
桜田さんがロールケーキにチョコ生クリームをコーティングした後、私はブッシュドノエルの模様をつけていく手順になっている。
もう少しで完成するブッシュドノエルは、世界一おいしいはず!
そう思いながら、続きの作業をこなしていった。
ブッシュドノエルはクリスマスの薪という意味をもつ。
チョコ生クリームをまとったロールケーキの上に飾られた苺と、ホワイトチョコレートのプレート。そして、ヒイラギのオーナメントピックがクリスマス気分を盛り上げる。
聖なる夜にピッタリなブッシュドノエルを慎重に箱に入れて、消費期限シールを貼れば、ついに完成。
達成感に浸りながら、ふぅとひと息ついていると桜田さんの容赦ない声が厨房に響いた。
「ほら。生地のあら熱が取れるまでに、クリームを頼む」
「……はい」
そう。一度に完成するブッシュドノエルは五個。だから、あと三回は同じ作業を繰り返し行わなければならない。
しかも今度は、予約のお客さんにケーキを引き渡す作業も加わる。まさに戦場と化した厨房で、手を休めることなく作業は続いた。
「疲れただろ?」
「はい」
「明日はクリスマスイヴだし、休んでもいいんだぞ」
ハンドルを握りながら、私に労りの言葉をかける桜田さんの横顔を見つめる。
「でも、桜田さんひとりじゃ大変でしょ?」
「ん? まあな」
たしかに言葉足らずなところがあるかもしれないけれど、優しい心の持ち主である桜田さんが、どうして奥さんと別居しているのか気になってしまう。