助手席にピアス

桜田さんがロールケーキにチョコ生クリームをコーティングした後、私はブッシュドノエルの模様をつけていく手順になっている。

もう少しで完成するブッシュドノエルは、世界一おいしいはず!

そう思いながら、続きの作業をこなしていった。



ブッシュドノエルはクリスマスの薪という意味をもつ。

チョコ生クリームをまとったロールケーキの上に飾られた苺と、ホワイトチョコレートのプレート。そして、ヒイラギのオーナメントピックがクリスマス気分を盛り上げる。

聖なる夜にピッタリなブッシュドノエルを慎重に箱に入れて、消費期限シールを貼れば、ついに完成。

達成感に浸りながら、ふぅとひと息ついていると桜田さんの容赦ない声が厨房に響いた。

「ほら。生地のあら熱が取れるまでに、クリームを頼む」

「……はい」

そう。一度に完成するブッシュドノエルは五個。だから、あと三回は同じ作業を繰り返し行わなければならない。

しかも今度は、予約のお客さんにケーキを引き渡す作業も加わる。まさに戦場と化した厨房で、手を休めることなく作業は続いた。



「疲れただろ?」

「はい」

「明日はクリスマスイヴだし、休んでもいいんだぞ」

ハンドルを握りながら、私に労りの言葉をかける桜田さんの横顔を見つめる。

「でも、桜田さんひとりじゃ大変でしょ?」

「ん? まあな」

たしかに言葉足らずなところがあるかもしれないけれど、優しい心の持ち主である桜田さんが、どうして奥さんと別居しているのか気になってしまう。

< 113 / 249 >

この作品をシェア

pagetop