助手席にピアス

桜田さんが運転するバンは高速道路を快調に飛ばす。二月の第二週の土曜日の午後の空は、空気が澄んで晴れ渡り、まさにデート日和。

助手席でポカポカと日差しを浴び、心地よい車の揺れを感じた私は次第に瞼が重くなってきてしまった。でも、目の前に広がった光景に眠気も吹き飛ぶ。

「桜田さん! 海?」

「ああ、もうすぐ目的地に着く。腹空いただろ?」

「うん、とっても!」

これからどこに行くのか、何度聞いても桜田さんは答えてくれなかった。



桜田さんが食事に連れて来てくれたのは、どこか懐かしさが漂う海沿いの洋食屋さん。

店の前のショーウィンドウに飾られているのは、ナポリタンの麺に絡まったフォークが宙に浮いているサンプル。重量感があるガラス扉を開けば、カランとベルが音を立てる。

午後三時を過ぎた時間なのに、チラホラお客さんがいる店内のテーブルの上に置かれた手書きのメニューが、さらにノスタルジックな雰囲気に拍車をかけていた。

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