助手席にピアス
尋常ではない様子を見せる早百合に、居ても立っても居られなくなった俺は、玄関のドアを閉めると手を伸ばす。そして小さく肩を震わせている早百合を、自分の胸に強く抱き寄せた。
「早百合、もう大丈夫だ。安心しろ」
本当はなにがあったのか、早百合に問い詰めたい思いで溢れていた。けれど今は自分を頼って来てくれた早百合を、ただ安心させてあげたかった。
儚げに涙を流す早百合だけを思いながら、抱きしめている腕に力を込める。すると次第に早百合の肩の力が抜け、落ち着きを取り戻していった。
早百合があれほど取り乱す理由は、朔のことに違いない。悔しいけれど、早百合にとって朔はそれほど大きな存在だということを承知の上で、俺は尋ねた。
「早百合、なにがあった?」
案の定、早百合の口から出たのは、この名前。
「朔太郎とケンカした」
「理由は? 進路のことか?」
黙ったままコクリとうなずいた早百合の姿を見た俺は、ため息をつきながら家に上がるように声をかける。そして、自分の部屋に早百合を招き入れた俺は、じっくりと話を聞くことにした。
「で? 朔がなんて言ったんだ?」
「私と一緒に地元の大学に通いたいって」