助手席にピアス
以前、朔は東京の大学に進学したいと語っていた。けれど正直な話、成績優秀な朔が進学する東京の大学に早百合が合格することは、天と地がひっくり返っても無理だろう。
ふたりが一緒の大学に通う方法は、ただひとつ。朔が東京の大学に進学するのをあきらめ、ランクを落とし、早百合が合格しそうな地元の大学に進学すること。
それほどまでしても、早百合と同じ大学に通いたいと願う朔の一途な思いを聞いた俺は、驚きと嫉妬を覚えた。
「早百合、朔と一緒に地元の大学に通ってもパティシエにはなれないぞ。俺なら早百合の夢を叶えてやることができる」
「……」
俺を選び、自分の将来の夢を叶えるのか、それとも、朔を選んで将来の夢をあきらめるのか。
卑怯にも俺は、早百合に残酷な二択を迫った。
けれど早百合は瞳を大きく揺らしながら、困った表情を浮かべるばかり。ハッキリしない早百合の態度にしびれを切らした俺は、ある決断を下すと行動に移した。
「早百合、助けて欲しいんだろ? だったら俺しか選べないようにしてやる」
テレビでは連日のように、真夏日を更新したニュースが流れている。けれど、エアコンをつけて窓を閉め切っている部屋にこもっていると、その暑さもどこか他人事だ。