助手席にピアス

窓際の席から見えるキラキラと光を反射する海を、桜田さんは眩しそうに見つめる。

きっと桜田さんの瞳には目の前に広がる海ではなく、朔ちゃんと早百合さんと過ごした高校時代が色鮮やかに映っているのだろう……。

思い出の中にタイムトリップしている桜田さんを現実に呼び戻すことに躊躇った私は、彼と同じように窓の外に広がる海を見つめた。

やがて桜田さんはふっと我に返ると、話の途中で運ばれてきた、テーブルの上の食べかけのオムライスに視線を落とす。

「冷めてしまったな。話が長くなってしまって悪かった」

「う、ううん」

桜田さんと早百合さんと朔ちゃんの過去を聞いてしまった私は胸がいっぱいで……。

その味を楽しむ余裕などなく、ただひたすらにオムライスを口に運んだ。



「車で移動する前に、寄っておきたいところがある」

桜田さんは洋食屋さんを出ると、車を止めていた駐車場とは反対側へと歩き出した。

海から吹き込む二月の風は、やはり冷たく、思わず首をすくめてしまう。けれど海沿いの道を歩いたのは、ほんの数十メートル。

角を曲がった先の小さな商店街に入ると、桜田さんは迷うことなく一軒の店に入った。慣れた口調でお店の人にオーダーをする。

そんな桜田さんの姿を見た私は、これから私たちが向かおうとしている場所がわかってしまった。

< 177 / 249 >

この作品をシェア

pagetop